冬ソナで泣きたい! ~Poppoの落書き帳~

   あなた… 今でも泣きたいんでしょう?    …泣くならここが一番ですよ…

連作『お昼の校内放送』

連作『お昼の校内放送』


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 「春川第一高等学校」のお昼の校内放送です。
 いろんな方が参加してくださった連作… 楽しい時間でした。


連作『お昼の校内放送』の目次を作りました。

全40話以上にもなるんですね…。
少しは読みやすくなったでしょうか。一部リンク切れがあります。




 『お昼の校内放送』 目次


第1回 by poppo

第2話 by poppo

第3回 by 子狸さん

第4回 by poppo

第5回 by 子狸さん


第6回 by うさこさん

第7回 by うさこさん

第8回 by poppo

第9回 by 子狸さん

第10回 by うさこさん


第11回 by うさこさん

第12回 by poppo

第13回 by 子狸さん

第14回 by うさこさん

第15回 by うさこさん


第16回 by うさこさん

第17回 by エコさん

第18回 by 阿波の局さん

第19回 by ruriさん

第20回 by seikoさん


第21回 by 阿波の局さん

第22回 by poppo

第23回 by 子狸さん

第24回 by あとむままさん

第25回 by うさこさん


第26回 by とまとさん

第27回 by seikoさん

第28回 by あとむままさん

第29回 by seikoさん

第30回 by とまとさん


第31回 by ruriさん

第32回 by 阿波の局さん

第33回 by poppo

第34回 by 子狸さん

第35回 by 阿波の局さん


第36回 by うさこさん

第37回 by うさこさん

最終回 by poppo


番外編 by seikoさん

番外編2 by seikoさん

お昼の校内放送 第1回

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お昼の校内放送 第1回




キ~ン~コ~ン…


春川第一高等学校に、正午を知らせる鐘の音が響いた。
生徒達は、皆ほっとしたような顔で、教室の席についた。
ようやく昼食の時間だ。
それぞれ気のあった仲間達と机を寄せ合って、弁当を開いては騒ぎはじめていた。

やがて各教室のスピーカーから、お昼の校内放送が流れ始めた。

オープニングの曲に乗って、キム・サンヒョクの声が響いた。


「…みなさん。お昼の校内放送の時間です。

 本日の担当は、僕キム・サンヒョクと…」


「…学園のアイドル、私オ・チェリンで~す!」


(…おいおい… チェリン…。また、パク先生に叱られるぞ…。)

声しか流れないのに、チェリンはコンパクトを開いてしきりに髪型を気にしている…。

サンヒョクは苦笑いを収めると、またマイクに向かって話し始めた。


「…今年の冬も、もうすぐ本格的にやってきます。

 …初雪が降るのも近いでしょうか…。


 …今日は、少しロマンチックな気分で…


 今日の一曲目は…  ビートルズの『ミッシェル』です。」


 … ♪~ … … …


静かに『ミッシェル』が流れ始めた。

サンヒョクは、じっとそのレコードが回るのを見つめている。

その横顔を見ながらチェリンが言った。

「…めずらしいわね… サンヒョク。

 あなたがクラシック以外の曲をかけるなんて…。


 …何かあったの…?」


サンヒョクは顔を上げた。

「…いや… 別に…。

 …たまにはいいだろう?」

その寂しげな笑顔に、チェリンはなんとなく思い当たることがあった。


『カン・ジュンサン』…


彼が現れて以来、あのユジンとの仲がうまくいっていないらしい…。
きっと、それでサンヒョクは憂鬱になっているのだろう。

「…サンヒョク…。

 歌じゃ、だめよ…。」


「…? …歌じゃだめ? …どういう意味?」

チェリンはサンヒョクの顔を見つめた。

『 I love you…  I love you…  I love you…』

レコードが歌っている…。


「…歌じゃなく… ちゃんと自分の言葉で言わなきゃ…。

 …女って… それが聞きたいものなのよ…。」


「………。」


「…まぁ…元気出して!

 …ほら、終わったわよ!」

チェリンに肩を叩かれて、レコードの針を上げたサンヒョクは、マイクに向かった。

「…お聞きいただいた曲は…

 『 I love you 』でした…。」


(…サンヒョク…。 曲の名前、間違えてるわよ…。)


チェリンは、サンヒョクの後ろからマイクに向かって話し始めた。

「…次の曲は… 私の大好きな曲です。

 ガゼボの… 『アイ・ライク・ショパン』…。」

シンセの出だしからかなり経って、イントロを奏でるピアノの旋律が響き始めた。


「…長いイントロだな…。

 …チェリンはこういう感じの曲が好きなのか?」

サンヒョクの問いに、チェリンが答えた。

「…素敵でしょ?

 …長いイントロも… やがて始まる恋を予感させるものなのよ…。

 …やっぱりフランスの香りがいいわ…


 …行きたいなぁ… フランス…。」


サンヒョクは黙って聴いている。

(…長いイントロ…  いつか… 始まる恋…)


「…サンヒョク? 何考えてるの?」

不意に声をかけられて、サンヒョクはどぎまぎした。

「…あ、あ…。 …君…  フランスに行きたいの?」

思わず適当なことを言った。

チェリンはにっこりとした。

「…ええ。 …行くわ… いつか、必ず…。

 …見てらっしゃい… 『オ・チェリン』の名を、パリジャンたちに忘れられなくさせてみせるわ!」

サンヒョクはため息をついた。

(…チェリン…。  君は元気でいいなぁ…。)


しかし、サンヒョクは、そのチェリンの胸の奥で、チュンサンへの思いが切なく燃え上がっていることには気づかなかった。


曲が終わった。

チェリンは、また思い切りキュートな声で放送の終わりを告げた。

(…こりゃぁ… パク先生が乗り込んでくるぞ…。)


「…チェリン。 早く昼食にしようぜ。

 …昼休みの時間が終わっちゃうよ…。」


「…あ! 私、パン買ってくるのを忘れてた!

 …どうしよう…。」

チェリンの元気は、一気に萎んでしまった。


「…やれやれ… 仕方ないなぁ…。

 …僕の分が多めにあるから、分けてあげるよ。

 …本当は、ヨングクと食べるはずだったんだけど…。」


「……! …本当?  いいの?

 …助かった~!


 …でも… それって… あなたのおごりよね?

 …そうよね?」

サンヒョクは苦笑した。

「…わかってる…。

 …ほら、急げよ!」

ふたりは放送室を出た。

そして教室に向かって走り出していた。


                                          -了-


あとがき

今回のストーリーは、元々「冬の挿話」で書こうと思っていたものがベースです。
でも、「挿話」で書いてしまうと、この「お昼の校内放送」というおいしいシチュエーションが一回きりになってしまう…。
それで、また『連作』の題材として思い浮かんだのです。

校内放送ですから、何をやってもいいはず。
曲をかけるだけでなく、詩を詠んだり、青年の主張!みたいなものだったり、あるいはニュースなんかでも。
とにかくあの放送部の6人の青春時代を描いてみたい… そう思ってます。

どなたか『自分にも書かせろ!』という方、おられないかなぁ…。
 

お昼の校内放送 第2回


お昼の校内放送 第2回




正午の鐘の音が響き、校内放送が始まった。

「…みなさん、こんにちは。お昼の校内放送の時間です。

 …本日の担当は、僕クォン・ヨングクと…」

「…私、チョン・ユジンです。よろしくお願いいたします。」

今日の放送室は、かなり冷え込んでいて、ユジンは上着を羽織っていた。


「…では、本日の一曲目…。

 リクエスト・ボックスからの選曲、オフコースの『さよなら』です。」


ヨングクがレコードに針を落とすと、静かに曲が始まった。

ユジンも黙って耳を傾けている。


(…カン・ジュンサン… 今日もサボるなんて…。)

急遽、ヨングクに頼んで、放送を始めたのである。

「…ヨングク… ごめんね。

 …おかげで助かったわ。

 …また昼食抜きになるところだったわよ…。」


ヨングクは、弁当を食べながら言った。

「…まぁ、いいさ。気にするなよ。

 …それよりカン・ジュンサンのやつ…

 …一度ガツン!と言ってやらなきゃな…。」


「…あなた… 言える?」

ユジンがたずねた。


「…言えるさ…。 …俺が言わなきゃ…サンヒョクの仕事になるだろう?

 …あいつら… あまり仲が良くない感じだから…俺が言うよ。」


ヨングクも気になっているらしい。

ユジンも憂鬱な顔で考えている。


「…ねえ… ヨングク…。

 …あの人達… 天敵同士…みたいな運命なの?

 …あなたの占いで、わからないの…?」

ユジンの言葉に、ヨングクは箸を止めた。

「…それなんだよ!

 …実は俺… 占ってみたんだ…。


 …するとさ…

 …やつら… 不思議な運命の糸で結ばれてるんだよ…。」


「…不思議な運命の糸?

 …なに、それ…?」


ユジンの問いに、ヨングクは少し口ごもりながら答えた。

「…それは… 妙なことに、あいつら『兄弟星』の関係…なんだってさ…。

 …あんなにケンカばかりしてるのにな…。」


「…『兄弟星』って?」


「…ああ… 知らないのか…。

 …『兄弟星』っていうのはな… ひとつの星の回りを一緒に回っている星たちのことだよ。


 …地球と火星みたいなものかな…。

 …なんとなく兄弟みたいなもんだろ?

 …一緒に太陽の回りを回っているんだから…。」


「…地球と火星なら…あんなにぶつかったりしないでしょう?」


「…そうだな。 …やっぱり、おかしいよな…。」

ヨングクはそう言って笑った。

『…太陽は…ユジン… お前だよ』

そう冗談を言うつもりだったが、それは言わないことにした。


「…おっと! いけねぇ…。

 …ユジン! 次の曲!」


「…あ! ごめん!」

ユジンは次の曲のレコードをヨングクに手渡すと、マイクに向かった。

「…次の曲をかける前に… 一言話させてください…。」

ユジンは厳しい表情で、息をついた。

「…今日、私は他の人と一緒に放送を担当することになっていました。

 …しかし、その人は来ませんでした。

 …代わりにクォン・ヨングクが手伝ってくれています。


 …でも… これは、間違っています…。」

ユジンの表情を、ヨングクは弁当箱を手にしたまま、じっと見つめている。


「…来なかった…あなたに… 言いたい…。


 …誰も…  誰も…あなたの代わりには、なれないのです…。


 …私は、あなたを待っていました…。


 …約束…したのだもの…。


 …あなたが… 忘れたのだとしても…

 …私は… 覚えているのよ…。」


ユジンは、チュンサンに向かって語っていた。

きっと今頃は、校内のどこかで聞いているだろう…。


「…失礼しました…。

 …次の曲は… なんだっけ…?」

忘れてしまっていた。

慌てるユジンからマイクを取って、ヨングクが言った。

「…次の曲は、ベイ・シティ・ローラーズの『二人だけのデート』です!」


曲が始まった。

「…ごめんね… ヨングク…。」


「…いいんだよ…。

 …俺でも… 代わりにはなれただろう?」

ヨングクは微笑んでいる。

「…あ。 …ごめん…。

 …そんな意味じゃなかったのよ…。」


「…わかってるって…。

 …お前… 俺の代わりにチュンサンに言ってくれたんだろう?

 …ありがとう…。


 …あいつ… 聞いてたかな…。」


「…どうだか…。

 …でも、もういいの。


 …あれだけ言ったら、なんだかすっきりしたわ…。

 …ねえ、私もお弁当にするから、後はお願いね。」


「…わかったよ。

 …後は任せておけよ。」


「…ありがとう… 友よ!」


「…けっ! 調子のいい友だよ!」


ふたりは笑った。


寒かった放送室に、ほんのすこし温かな空気が流れはじめていた。


                                      -了-


あとがき

う~ん…。やっぱり「挿話」風になってしまうな…。
もっと違う雰囲気でもいいと思うのだけど…。
僕の限界…あるいは『カラー』なのかな…。

ドラマのセリフを使ってしまうところが、相変わらずのスタイルです。
それがいけないのかな…。

キーワードは『代わり』です。

どなたか『代わり』はいませんかね…。
 
  

お昼の校内放送 第3回 by 子狸さん

おなじみ「連作仲間」の子狸さんが、第3回を書いてくれました。

まずはご紹介!


お昼の校内放送 第4回


お昼の校内放送 第4回





正午の鐘が校内に鳴り響き、今日も昼の放送が始まった。


「…みなさん、こんにちは。

 お昼の校内放送の時間です。

 本日の担当は、私コン・ジンスクと…」

チンスクはソファーに座ったままのチュンサンを見た。

チュンサンは視線を合わそうともせず黙っている。

「…カン・ジュンサンのふたりでお送りいたします…。」

チンスクは、身体を固くしたまま言った。

何を考えているのかわからない彼が、怖ろしかった。


「…今日は、最近のニュースの中から…。」

仕方なく、チンスクは昨日作った原稿を読み始めた。


「…このところ、連日のように『児童虐待』の記事を見かけます。

 本当に信じられない思いです。

 いったいどうしてこんなことばかり起こるのでしょうか…。


 かわいいはずの自分の子どもを、どうして親である人達が虐待するのでしょうか…。


 生まれたときは… きっと愛情いっぱいのまなざしで見守っていたはずなのに…。


 …私には、どうしてもその理由が見つかりません。


 みなさんのご意見を、お寄せください。
 この問題について、みなさんと一緒に考えていこうではありませんか…。」

チンスクは、涙ぐみそうになりながら、原稿を読み上げた。

「…では、ここで曲を…。

 曲は、『モーツァルトの子守歌』、『シューベルトの子守歌』そして『風の子守歌』です。」

ちらりとチュンサンを見た後、チンスクはテープデッキのスイッチを入れた。

静かに曲が始まった。


チンスクは、チュンサンに背を向けて、次の曲のレコードを用意していた。


「…おい… チンスク…。」


「……!」

いきなりチュンサンに呼ばれて、チンスクは飛び上がるようにして振り返った。


「…な…なに… チュンサン…。」

声が震えているのが自分でもわかった。

そのチンスクの様子を見ながら、チュンサンはうっすらと笑った。


「…お前… 俺が、そんなに怖いのか…?

 …俺… そんなに怖い顔をしてるか?


 …パク先生ほどじゃないだろう?」

そう言って、チュンサンはパク先生の口真似をした。

「『コン・ジンスク! そこに立っていろ!!』」


「……!!」

あまりに似ていたので、チンスクは思わず吹き出した。

チュンサンも微笑んでいる。

チンスクは、ほっとした顔で言った。

「…チュンサン…。

 …あなたも… 笑うことがあるのね…。

 …よかった…。


 …初めて会った時から… 心臓が止まるかと思うほど…
 …ごめんね… 怖かったの…。

 …だって、あなた…。」

チンスクは、チュンサンとサンヒョクの争う姿を思い浮かべてため息をついた。

その言葉にチュンサンは、また表情を沈めて言った。


「…今日のニュース…

 …そんなに驚くことなのか?」


「…え? …どういうこと…?」

チンスクは聞き返した。

「…つまり…

 親にとって、子どもよりも自分が大事…ってこと。


 子どもなんて、結局は親のおもちゃなんだよ…。」

チュンサンは、嘲るような笑い顔で言った。


チンスクは悲しい気持ちになった。

「…それは…違うと思うわ…。

 …うちのパパもママも… 私をかわいがってくれるわよ。


 …あなたのご両親もそうでしょう?」

チンスクの言葉にチュンサンは、黙ったまま答えなかった。


「子どもって… 愛の結晶でしょう?

 …それを傷つけるのは… 親たちに愛がなくなったからなのかしら…。


 …それも、悲しいことよね…。」


「………。」

チュンサンはチンスクをにらんでいた。

その目…。

やはり…  怖い…。


その時、曲が終わった。

「…あ… チュンサン… これ、かけてくれる?」

マイクに向かったチンスクが、次のレコードを手渡そうとした。


「……。」

チュンサンは、それを受け取り針を落とすと、そのまま何も言わずに放送室を出て行った。

「…あ、チュンサン!


 ………。


 …失礼しました。

 …次の曲は、『愛の賛歌』です…。」


チンスクは、チュンサンの出ていったドアを見つめた。

少し開いたままの隙間から、冷たい冬の風が吹き込んでいた。



                                    -了-



あとがき

本当に、最近の『児童虐待』のニュースの多さには悲しくなります。
痛ましい事件・事故ばかり…。

中には「保護者が目を離した隙」が原因のものもあります。
それなのに他者を訴える例も。

もし…保育園の保母さんが目を離した隙に…何かの機械で事故にあったら…。
機械の管理者を訴えるより先に、保母さんが訴えられるでしょう。

でも、目を離した親は…訴えられない…。


別に、親を非難しようとは思いません。
誰が悪い、ということを判定したがる風潮が嫌なだけ。

他人を非難すること…。
自分の責任を顧みないこと…。

全ての悲劇の原因が、そこにあるような気がします。
 

お昼の校内放送 第5回 by 子狸さん

第5回は、子狸さんの作品です。
時事ネタニュースをユジン&サンヒョクのふたりがお送りします。
う~ん…。我が家も朝食を食べる習慣がないので、ちょっと考えちゃいました。

    「お昼の校内放送 第5回」 by 子狸さん

お昼の校内放送 第6回 by うさこさん

ようやく登場してくれました。
連作仲間のうさこさんです。

いきなりの2話をひっさげての参加、うれしく思います。

まずは番外編?から。
どうぞ!

   「お昼の校内放送 第6回」 by うさこさん

お昼の校内放送 第7回 by うさこさん

うさこさんらしい作品…だと思います。

なんだかうれしいような、うらやましいようなストーリー。
僕も、高校時代を思い出しました。
あのお弁当… 美味しかったな…。(*^_^*)


    「お昼の校内放送 第7回」 by うさこさん

お昼の校内放送 第6回 by うさこさん

お昼の校内放送 第6回 by うさこさん




珍しく、この日、ユジンは朝早く、目覚まし時計よりも早く目覚めた。

朝日が差し込むカーテンを開けて、朝の空気を吸い込んだ。

机の引き出しから、手帳を取り出し、今月のページを開いた。

今日の日付についている赤丸を確認すると、自然に頬が緩んだ。


早速、いつもの様に台所に立ち、お弁当の支度を始めた。

今朝は特別に昨日の夜から下ごしらえした鶏肉を冷蔵庫から出して、フライパンに火をつけながら、ヤカンにお湯を沸かす。卵を割り、解きほぐす。

慣れた手つきで小さな台所でユジンは効率よく動線を描いていた。

普段より一品、多いお弁当が完成した。

(あまり、手が込んでいるのもおかしいわね・・・)

ユジンは最後にウサギの形に切った林檎をおかずの隙間に入れたり、出したりを2度、繰り返した。

その行為をふと、客観的に見つめてみると妙におかしくて、ひとりで吹き出してしまった。

(まっ、いいか・・・)


同じお弁当を2個並べると急に頬が火照ってくるのを感じた。

(どうしたのかな・・・私?)

思いに耽っていると、不意に母親のギョンヒの声がした。



「今日は早いのね。」

「あっ。ママ、おはよう」

ギョンヒはウサギの林檎が入ったかわいいお弁当を見つけると、ユジンの顔を意味ありげに嬉しそうに覗き込んだ。

「ママ・・。あのね。チ、チンスクがね・・。

 え~と・・。お弁当が作れなくって・・それで・・あの、ご、ご両親が旅行でいなくて・・・あの、え~と・・・・」

しどろもどろに言い訳するユジンをギョンヒは笑った。

「おいしそうね。きっと、美味しいって食べてくれるわよ」

「そう? ママもそう思う? 美味しそうかな?」

ユジンはうれしそうに目を輝かせた。


「ええ・・。すごく、美味しそうよ。

 それより、ユジン、もうこんな時間よ。

 さ、早く支度しなさい。髪もきれいにして行かないと・・でしょ?」

時計を見たユジンは慌てて洗面所に駆け込んだ。


「ユジン、朝はちゃんと食べないとダメよ。牛乳もちゃんと飲みなさいよ」

いつもの様にギョンヒの声が聞こえた。

          ※

ユジンは家を出て、いつもより足取り軽く坂道を駆け下りた。

バス停でサンヒョクが手を振っているのが見えると急に歩調が緩んだ。

無意識のうちにお弁当の入ったカバンをそっと後ろ手に回した。


自分と雑談しながらもどこか上の空で、満員バスの中でもきょろきょろと辺りを見回し、落ち着きのないユジンがサンヒョクは気にかかった。

          ※

校門をくぐるとそれまで、サンヒョクと並んで歩いていたユジンはサンヒョクの話など上の空と言った風にいい加減に相槌を打ったかと思うと急に駆け出した。

チュンサンの後姿に追いつくとユジンは小さく深呼吸した。

「チュンサン、あのね・・・・今日、お昼、放送・・当番・・一緒に・・・」

息を切らせて、そこまで言いかけた時、追いついたサンヒョクの声が聞こえた。

「サボるなよ。チュンサン」


チュンサンはサンヒョクには一瞥しただけで何も言わず、ユジンにだけ「ああ。」と短く答えると足早に校庭の中に入って行った。

「まったく、無愛想な奴だな。ユジン、気にするなよ」

ユジンに優しく気遣うサンヒョクはユジンの視線の先がチュンサンの後ろ姿を見えなくなるまで追っていた事に気づいていなかった。


         ※

3時間目終了のチャイムが鳴るとチュンサンは教室から出て、売店に向かった。

パンの販売が始まる時間だった。

ユジンも席を立ち、チュンサンに声をかけようとした時、チンスクに声かけられた。

「ユジン、カバン替えたの? これ」

チンスクはいつもの赤いカバンよりひと回り大きいブルーのカバンを不思議そうに指差した。

「え? ええ・・」

ユジンは曖昧に答えると教室を出たチュンサンを追った。

ようやく見つけたチュンサンの手にはパンの袋があった。

自分の姿をじっと見つめるユジンに気づくと、チュンサンは「サボらないから安心しろよ」そう言いながらパンの袋を得意気に見せた。

「もう、パン買っちゃった?」

「ああ。昼に買いに行くと、また、責任感がどうの・・とか、昼飯抜きだったとか・・放送で言われたらいい気がしないからな・・」

チュンサンは憎まれ口を叩きながらも、うっすらと笑った。

「・・・・・」ユジンは落胆した。

「おい。何、ぼんやりしてるんだ? 次、カガメルの時間だから、遅れるとまずいぞ」

「・・・う、うん」

4時間目の始業を告げるチャイムが鳴ると二人は教室に急いだ。

       
           ※

ユジンは授業にも身が入らず、お弁当の入ったカバンを恨めしそうに睨んだ。

(いつもは昼休みに買いに行くのに、どうして今日に限って、早く買いに行くのよ・・。

 チュンサンのバカ・・。せっかく、早起きしたのに・・)

斜め後ろをチラリと振り向くとチュンサンと目が合いそうになって、慌てて前を向きなおした。

(一人で2個食べるのは変だし・・・。どうしよう・・・)

ユジンは一人で頭を抱えた。


         (つづく・・・byうさこ)

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