5e5c67eb.jpg

「山小屋の二人」








「とにかく寒いから中に入ろう」

ヨングクの言葉に、6人は山小屋に戻った。

痛めた足を少し引きずりながら、ユジンはフロアの隅のベンチに腰掛けた。

「本当に大丈夫?」

チンスクが心配そうに尋ねた。

「…大丈夫…。ちょっと転んだだけだから…  心配しないで…。」

ユジンの弱々しい微笑をにらみながら、チェリンが言った。

「じゃぁ、私は先に休むわね。 …もう… あちこちが冷えちゃって最悪!」


「そうだな。今夜はもう寝た方がいいだろうな。俺も部屋に戻るよ。」

「……。 僕も寝るよ。」

ヨングクとサンヒョクも部屋に戻って行った。


「ユジン…。私たちも休まない…?」

チンスクは片手であくびを隠しながら言った。

「うん…。 私は…  ちょっとお湯を沸かしてから…。

 そう…  お茶であったまってから眠るわ。」





           *




「まだ… 足が痛むのか?」

一人、フロアに残ったユジンに、チュンサンが戻ってきて言った。


「…ん?  まだ起きてたの?」

ユジンは、紅茶のカップをテーブルに置いて振り返った。


「…まだ… 眠くはないから…」

チュンサンは口元に少し笑みを浮かべて言った。


「ユジン… これを使えよ。」

テーブルの上に投げられたのは、湿布薬の袋だった。

「…これを…?  …私に…?」

「…ああ…。   借りは作りたくないんだ…。」

「…!  あ。 これ… 私がいつかあげたやつじゃない!」

湿布薬の袋には、あの夜ユジンが買った薬局の店名が書かれていた。

二人は顔を見合わせて笑った。


「さぁ、足を出して…  俺が貼ってやるよ。」

「…え…   そりゃぁ… ありがたい!」

おどけるユジンの足元に、チュンサンが膝をついた。

ユジンはおとなしく足を出し、チュンサンが湿布薬を貼ってくれるのを見つめていた。



           *



「さあて…  これでよし…っと。  …ユジン… あとは部屋に戻って、早く休んだ方がいいよ。」


「…ありがとう… チュンサン…。」

ユジンはようやく暖まり始めた身体を大きく伸ばして立ち上がった。


「ねぇ… 明日は… どうするの?」

ヨングクの話では、お昼前には町に戻ることになっていた。


「そうだな…。 とりあえず…  朝は誰かと散歩かな…」

チュンサンも背伸びをしながら答えた。


「…誰かって?」


「…さぁね…。  ユジン… ちゃんと寝ろよ…  おやすみ…」


小さく笑って、チュンサンは部屋に戻って行った。


(  …  …  …!  )


ユジンは、頬まで温かくなってきたのを感じていた。

窓の外を見ると、またあのポラリスが小さく輝いているのが見えた。



                            -了-





あとがき

これもごみ箱から拾ってきたボツ原稿の手直し。
短かすぎて挿話にもなりませんね。
見たことのあるセリフをいくつか使って書いた初期の原稿です。

高校生の時代の二人を書くのは意外と難しいです。
ユジンの明るさを書けば書くほど気分が沈んでいくのです。