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「鉄面皮」






チェリンのブティック。

出来上がったウェディングドレスを、チンスクが勧めるままに、私は身に着けた。

その純白の美しさ…

私は、心のどこかで虞にも似た気持ちにとらわれていた。

申し訳ない気持ち…

素直に喜べない気持ち…


次第に私を締め付けてくるドレスの苦しさに、私はチンスクを呼んだ。



試着室のカーテンを開けた私の目の前に、彼がいた。

私には、全身の血が引いていくのがわかった。



誰よりも…


その顔を見たかった人…



だけど、今は…


誰よりも…


この姿を見せたくなかった人…


私は、悪事を見つけられた子供のように、落ち着きを失っていた。



試着室に戻りかけた私の足元に、ヒールが片方転がった。

私の動揺を嘲笑うかのように、ドレスの裾が重くからんでくる…


彼は、ゆっくりとこちらに歩み寄り、ヒールを整えてくれた。


あの日の…  チュンサンみたいに…


彼は言った。

「…お似合いです」


私は引きつった表情のまま、答えた。

「…お久しぶりです…」


どうしても『ありがとう』とは言えなかった。

言えるはずがなかった。


彼は「…ええ…  久しぶりですね」と寂しく笑った。

その彼の表情が辛くて、私はうなだれた。

彼もまた目を伏せながらうなだれた。

私たちには、互いの心が見えているのだと思った。



それゆえに、彼の「聞きたいことがある」という言葉には、正直に答えようと思った。


「私を好きだと言ったのは… チュンサンに似てたから…?」


私は即座に否定した。

「…いいえ…   ミニョンさんはミニョンさんとして…

 チュンサンは、チュンサンとして…  二人とも…好きでした」

それは、私の偽らざる気持ちではあったが、ずいぶんと勝手な答えだとも思った。

ありようは、私が今もチュンサンを忘れられないでいることを告げただけ…。


なのに私は… 愛してもいないサンヒョクを選んだ、厚顔無恥な女…。



彼は、哀しい目を向けて、言った。

「…ありがとう」


私は、恥ずかしさに身を固くするだけだった。



そこへ、ティアラを持ってチンスクが帰ってきた。



彼は、チェリンに挨拶をしにきただけだと言った。

その言い方に違和感を覚えた私は、何の挨拶なのかと尋ねた。

彼は、急に明るい表情を作って「意味はありません」と答え、笑顔を浮かべた。

そして、去り際に私を見つめて言った。


「…結婚…   おめでとう…」



誰にもまして… 聞きたくなかった人からの言葉…


胸に湧き上がる罪悪感と自分への嫌悪感…



それなのに…  私は泣けなかった…。

…泣かなかった…


チンスクに、この恥ずかしい姿を晒している私…

私自身を笑った後、私は涙をこらえながら歯をくいしばった。





                           -了-



あとがき

第13話の1シーンをなぞっただけの乱文です。
このシーンのジウssiの目の演技はすごいですね。
もちろん受けて立つヨンジュンssiの表情もいいんですが。
どう見てもカップルにしか見えない二人の衣装の対比も美しいです。
「鉄面皮」はひど過ぎるタイトルですが、ユジンらしい自虐のあらわれかと。