「誕生」





小さな寝息をたてて…  眠っているこの子…。


私はなぜ、この子を産んだのだろう…。



あの人への憎しみの中で、私が決めた選択…。

なぜ…。



誰からも、祝福されないこの子の命…。

この命を守ることを、私はこれからの生きる糧としていけるのだろうか…。


この子は、何のために生まれてきたのか…。

誰のために、生きていくのか…。

それを私は、私自身に問うていくのかもしれない。


少なくとも、この子は私を死ぬことから救ってくれた。

この子を宿したことを知って、私は死ぬことを諦めた。

私に課せられた運命に、逆らってみようと決めた。


あの人が別の幸せを選んだ今… 私も、別の幸せを選ぶのだ。

この子を… あの人の子と思って育てていこう。



安らかな寝顔…。

そこには、あの人の面影はない。

でも、きっとこの子はあの人に似た子どもになると信じている。

私は、そう信じている…。



私は、この子に『チュンサン』と名づけた。

『カン・ジュンサン』…

父親を知ることのない、かわいそうな子…。

そう…。

お前の父は… 私を捨てた男なのだ。

お前は、私の悲しみをわかってくれるはず…。

その小さな手で、私のこの心を温めておくれ…。

私の、冷え切った心を抱いておくれ…。


チュンサン…。

お前は、私の子…。


寒く、冷たい雪が舞うこの冬の日に、ひとりぼっちの私に授けられた温かな命…。

お前と私は、これから身体を寄せ合って生きていくのよ…。



泣くまいとしても…

恨むまいとしても…



私には、それを抑えることができない…。


チュンサン…。


お前だけが… お前だけが… 私に生きる希望を与えてくれるのよ…。



チュンサン…。


チュンサン…。



ごめんなさい…。


あなたを… こんな私が産んでしまって…。



チュンサン…。


チュンサン…。



愛おしい… 私の子…。



                       -了-


あとがき

ミヒの心は、正直なところよくわかりません。
しかし、チュンサンを産んで、たったひとりで育ててきたのは確かなこと。
母としての願いは、必ずそこにはあったと思うのです。

添付した画像は、生後2日目の赤ちゃんの手。
その手に、しっかりと幸せの鍵を握らせてあげたいですね。